« 「カラシニコフ自伝」(エレナ・ジョリー著、朝日新書) | メイン | VMware Fusionで御難 »

2008年6月 3日

「Googleを支える技術 巨大システムの内側の世界」(西田圭介著・技術評論社)

Googleのプラットフォームは、低価格のコンポーネントを大量に用いて高速で信頼性の高いシステムを構築していることで有名だ。しかし、その実態は積極的には公表されていない。秘密主義は、Googleのもう一つの顔である。

本書の著者はGoogleが公開している技術論文を読み解き、Googleの社内システムを緻密に推測する。対象は、大規模検索、分散ストレージ、分散データ処理、データセンター運用コスト、それに開発体制。

ソフトウェア技術で興味深いのは、分散ストレージ(GFS, Bigtable, Chubby)と分散データ処理(MapReduce, Sawzall)である。いずれも、検索を大量に高速に頑丈に実行するために構築されたシステムだ。そして、その目的を遂行するために強力なスケーラビリティと耐障害性を実現している。

情報技術を使ってビジネスを実現し、遂行する。必要ならアプリケーションだけでなく、プラットフォームも自製する。これは、Googleだけでなく、ほかの情報技術インテンシウな企業も同じだ。プララットフォームまで自製するコストを投資と見なせるのは、時間を短縮することがビジネスの成否に決定的だからだ。

20年以上前、日本の銀行はオンラインシステムを再構築するために、IBMに専用のトランザクションモニタ(IMS)を開発させた。システムの構築にも長い年月がかかった。今から見ればビジネスを実現する速度が牧歌的に見える。

情報技術をビジネスの核心に据える企業は情報システムを自製する。ときにはプラットフォームまで自製する。投資も惜しまない。そうでない企業が情報システムを外注する。外注経費は投資ではなく、削減すべきコストである。したがって、受託してシステムを開発するいわゆるSIerという業態は、つねにコスト削減圧力にさらされることになる。

SIerという業態は、基本的に発注者からオーダーされたシステムを構築する。そこで新しい技術が創造されることはほとんどない。ビジネス遂行のために新しい技術が創られるGoogleとはじつに対照的だ。もちろん、新しい技術を創らなくてもビジネスは成立するのだろう。

さて、本書で紹介された分散ストレージや分散処理は、Googleのコアビジネスたる検索を支えるシステムである。Googleは、検索以外のアプリケーションを増やすことにも努めており、そうしたアプリケーションを大量に頑丈に実行するプラットフォームも構築しているはずだ。つぎの関心事はここである。

なお、本書はソフトウェア技術だけでなく、データセンターの設備・電力にまで記述が及んでいる。著者はソフトウェアだけでなく、理科全般の素養も備えており、記述は的確だ。

投稿者 kmatsu : 2008年6月 3日 21:45

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bsx.hundun.net/bm/mt-tb.cgi/797

コメント

コメントしてください




保存しますか?