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2008年5月14日

「カラシニコフ自伝」(エレナ・ジョリー著、朝日新書)

ミハイル・カラシニコフはソ連・ロシアの銃器設計者。自動小銃(突撃銃)AKシリーズを設計した人物である。彼の手になるAKシリーズ(AK47、AKM、AK74)は旧共産圏各国で採用された。それだけでなく、世界各地の紛争で必ずお目にかかる。紛争当事者の双方がAKシリーズを手にして闘っているのもごく当たり前の光景である。

軍用銃でいちばん重要な性能は、泥や砂にまみれても、極寒でも酷暑でも、いざというとき必ず使える(撃てる)こと、すなわち信頼性である。AKシリーズは、非正規軍の方々からも、命を託すことができる道具として絶大な信用を得ているのだ。

AKシリーズについては、ジャーナリスト松本仁一の著作「カラシニコフ(正・続)」がくわしい。紛争国の実態を報告するだけでなく、カラシニコフ本人へのインタビューも掲載されている。おかげで、カラシニコフの人物像や、AK47誕生の経緯を知ることができた。
Sub specie aeterni: 「カラシニコフ」の語り部

ところが、カラシニコフには松本仁一に語っていない過去があった。それも、きわめつけの過去を。1930年代、ソ連では「富農撲滅運動」が展開され、多くの農民が処刑され、あるいはシベリア流刑で過酷な生活を強いられた。カラシニコフの家族もシベリアに送られ、その上、彼は流刑地から脱走していたのである。銃器設計者として名誉を得、ソ連最高会議の代議員に選出された後も、彼はその過去を隠し続けた。ゴルバチョフのペレストロイカ・グラスノチを経て人生の最後のステージに入ったとき、やっと封印を解いて過去を明かしたのだ。

松本仁一の「カラシニコフ(正・続)」を読んでから本書に接すると、じつに感慨深い。ご本人はもっと感慨深いだろう。新聞の書評で本書を取り上げ、短いスペースの中で驚きと嘆息を表していた。

投稿者 kmatsu : 2008年5月14日 21:54

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