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2008年1月 7日
電子投票の難しさ
米国では大統領選を前に電子投票の準備が進んでいる。その様子を伝えるNew York Timesの記事。
Voting Machines - Elections - Ballots - Politics - New York Times
印象的な一文はこれ。
Part of the problem stems from the fact that voting requires a level of precision we demand from virtually no other technology.
選挙は一回限りのイベントであり、かつ、結果は当落の二値によって決定的である。当落を判定するための得票数はえてして僅差となる。したがって、投票の結果にはきわだった正確さが要求される。また、その結果に疑義が生じたときは、投票結果が検証可能でなければならない。
It is the need for anonymity that fuels the quest for perfection in voting machines.事態をややこしくするのは、投票には正確さと同時に匿名性(ある種の秘密性)が要求されることだ。無記名投票では、特定の投票者がどの候補者を選択したかを秘匿しなければならない。情報技術では、匿名性と検証可能な正確さを同時に実現することはきわめて難しい。電子投票の難しさはここにある。
日本でも地方自治体の選挙で電子投票が何度か実施されている。不具合が多く、訴訟に至ったケースもある。表面的な問題は機械や記録媒体の故障である。だが、問題の本質は匿名性と検証可能な正確さを、情報技術だけでは実現できていないことにあるのだ。
Critics of touch-screen machines say that the best choice is “optical scan” technology.
この記事の結論は紙に頼ること。タッチスクリーンで直接電子データを作るのではなく、紙にチェックしてそれを光学スキャナーで読み取り電子データを生成する。数え直す必要が生じたときは紙に戻る。匿名性と検証可能な正確さを同時に実現する手段は紙、というわけだ。
米国の電子投票機器には、投票結果をキャッシュレジスター用のプリンタでロールペーパーに印刷・記録するものがある。プリンタは、投票者の手に触れないように透明な窓から見えるように設置されており、投票結果を確定する前に目視するようになっている。とはいえ、印字は小さくて高齢者には読みづらい。また、ロールペーパーでは結果が投票者の順番に記録されてしまうので、投票者が10人しかいないような小さな投票所では個人の投票結果が分かってしまう。そのため、紙に印字する機能を備えない機種を調達した州もあるという。
電子投票というと、自宅のPCや携帯電話で投票する場面を想像する向きも多いだろう。だが、実際には投票所に電子投票機器を設置している。有権者が、強制なく自発的な意志で投票することを保証するためである。また、電子投票機器はスタンドアロンであり、投票終了後に記録媒体を選挙管理委員会運んで集計している。すべての投票所にネットワークを用意し、それを安全に安定して用いることが難しいからである。電子投票機器の主な機能は、ユーザインタフェースと結果の記録。情報技術としては実にローテクである。
「紙頼み」はローテクな情報技術よりさらにローテクである。それでも、投票で必要なものを実現するには、当面は現実解ということだろうか。
投稿者 kmatsu : 2008年1月 7日 23:09
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