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2007年12月31日

「モテたい理由 男の受難・女の業」(赤坂真理著、講談社現代新書)

本書は、男女論と戦後日本論という2つのテーマが接ぎ木されている。

男女論は女の「モテ」という価値観の分析が中心だ。それを「女の業」と捉え、女性誌の記事から分析していく。分析のスタンスが男にフェア、というか、好意的であるところが目新しい。「オタクと恋愛至上主義女とは、同じことの逆をしていて、鏡像とも言うべき関係なのだ」(p.50)など。

戦後日本論は第1章の冒頭で提示され、しばらく男女論が続いたあと、終章でふたたび展開される。

社会が戦争を「考えてもいけない」禁止原理主義をとれば、男の価値は下落していく。古今東西、男の価値を究極的に担保してきたのは戦争だったからだ。いい悪いではない。そういうものだ。男の共同体における価値はそこから発生したものである。(p.8)

終章「戦争とアメリカと私」は、アメリカに敗れた事実を隠蔽してきた戦後日本のねじれを、アメリカに留学した経験のある著者の自分史に引き寄せて語っている。

私は、戦争を内化して語らない親を見て育った。そして「植民地宗主国」で適応に失敗してしまい、戦争と敗戦を内化してしまった。身体が成長するときに摂ったものが決定的に血肉となってしまい、それを取り除くことができない。
これは日本人そのものの姿であるように私には思えるのだ。
<中略>
それは日本でごくふつうの状況になってしまっているが、人間にとってかなり異常で苦しいことだ。何百万人もの命が失われその屍の上に繁栄(今でもそれなりの)を築き、それが公然の秘密となっているということは。(p.221)

軽妙・的確な男女論と屈託に満ちた戦後日本論=自分史。不思議な読後感。けれども、印象的。

投稿者 kmatsu : 00:35 | コメント (0) | トラックバック

2007年12月30日

「イーハトーブと満州国 宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷」(宮下隆二著、PHP研究所)

ケンジとカンジといえば、宮沢賢治と石原莞爾。いまも関心を集める重量級のスターたちである。詩人・作家と軍人・思想家。その役回りは大きく隔たっていても。

ところが、二人はともに日蓮宗の熱烈な信徒であり、在家の法華経教団である国柱会の会員だった。日蓮の教えを奉じる宮沢賢治と石原莞爾。本書はこの共通点から二人の生涯を見つめ直し、資質の共通性を描き出そうとする。二人が同じ宗派を奉じていたことは広く知られているが、同時に論じる試みは初めてだという。

意気込みやよし。大いに期待して本書を手に取った。

結果は期待には及ばず。

まず、石原莞爾の記述が史実のフォローにとどまっている。稀代の語り部、平岡正明には「石原莞爾・試論」がある。平岡正明による血湧き肉躍る石原莞爾像を越えるものを期待してしまった。

そして、宮沢賢治と石原莞爾に共通する「狂」ともいえる宗教的情熱がよく伝わらない。宮沢賢治も石原莞爾も、狂気に近い情熱をもって理想に向かったと描かれるが、その熱さと怖さが伝わらない。

最終章は豊かさを得て夢を失った現代の世相批判である。

こういうときに、宮沢賢治や石原莞爾が注目されているというのは、偶然ではあるまい。それは彼らが、今の日本人が失ったものを、豊かに所有しているからである。
激しい信仰と情熱。理想郷への憧れ。幾多の挫折。自ら信じたものを最後まで貫こうとする不屈の意志。そしてこの世に生のあるうちに受け取った、僅かな栄光。(p.253)。

重量級のスターたちを遇する結論として、浅すぎないか?

なお、日蓮の生涯、国柱会の活動、それに宮沢賢治の作品に登場する法華経の影響は初めて知るものもあって有益だった。

投稿者 kmatsu : 22:21 | コメント (0) | トラックバック

2007年12月24日

「天皇の日本史」(武光誠・著、平凡社新書)

腰巻きにこうある。

権威と聖性、そして呪性−。天皇はなぜ、その地位を保ち続けたか?日本史最大の謎に挑む!

古代、院政期、平氏政権、鎌倉時代、南北朝・室町時代、安土・桃山、江戸時代。それぞれの時代における朝廷・皇室と時の権力者の関わりが記述される。記述レベルは高校の日本史の教科書と大差なく、「日本史最大の謎に挑む!」という腰巻きの惹句は肩すかし。

とはいえ、読中・読後に思いついたことがあった。

まず、時の権力者が皇室の権威に依拠しつつ皇室を存続させてきたのは、存続していることそれ自体が力になっているからである。存続、力の強化、存続という循環は、まさに「継続は力なり」。

そして、「継続は力なり」が可能であり続けたのは、文化を根本的に異にする外敵に侵略・支配されたことがないからである。これは柄谷行人がどこかで言っていたことの受け売り。

投稿者 kmatsu : 21:30 | コメント (0) | トラックバック