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2007年9月 1日
映画史上ベスト10+1とピーター・ボグダノヴィッチ
ニューヨーク近代美術館の映画担当キュレーターが選んだ映画史上ベスト10+1が雑誌「芸術新潮」2007年9月号に紹介されている。(この号は、ニューヨークの美術館を全冊特集で紹介している)
- 有頂天時代(ジョージ・スティーブンス監督、1936年、アメリカ)
- 許されざる者(クリント・イーストウッド監督、1992年、アメリカ)
- 厚化粧したレディ(D・W・グリフィス監督、1912年、アメリカ)
- チャップリンの番頭(チャールズ・チャップリン監督、1916年、アメリカ)
- 荒武者キートン(バスター・キートン監督、1923年、アメリカ)
- ヒズ・ガール・フライデー(ハワード・ホークス監督、1940年、アメリカ)
- わが谷は緑なりき(ジョン・フォード監督、1941年、アメリカ)
- 東京物語(小津安二郎監督、1953年、日本)
- 大地のうた(サタジット・レイ監督、1955年、インド)
- 自由への旅立ち(ジュリー・ダッシュ監督、1991年、アメリカ)
- ストレイト・ストーリー(デヴィッド・リンチ監督、1999年、アメリカ)
観たことがある作品が5作、他の作品を観たことのある監督が4人。20年前の映画好きとしては、大筋がずれていなくてまずはほっとする。
それにしても、あるジャンルのベスト作を提示するのは難しい。そのジャンルにおける自分の関わり方の幅や深さを示すからだ。
ピーター・ボグダノヴィッチという1939年生まれの米国の映画監督がいる。映画監督に転じる前は、映画批評家として名をなしていた。ある文章で、自分が生まれた年に製作された米国映画のベスト10を掲げている。それは綺羅星のような作品群である。嫌らしいほどの衒学趣味。そしてまた、当時の米国映画の豊穣さを示してもいる。
このベスト10は「ハリウッド・インプレッション--映画、その日その日。 」という書物に掲載されている。
ハリウッド・インプレッション―映画、その日その日。
本書には、往年のハリウッド映画に関わった監督や俳優へのインタビューが収録されている。時期は、ハリウッド映画が衰退した1960年代。同じ時期に上梓されたケネス・アンガーの「ハリウッド・バビロン」と同じように、本書は死につつあるハリウッド映画への挽き歌である。ただ、スキャンダルの歴史からハリウッドの死を看取るアンガーに対して、ボグダノヴィッチの著作には映画への愛と趣味の良さが感じられる。
ピーター・ボグダノヴィッチのバイオグラフィーには、代表作として「ラストショー」(1971年)や「ペーパー・ムーン」(1973年)が掲げられることが多い。当時の「アメリカ・ニューシネマ」というジャンルが死滅したのと同様に、記憶に残る作品はほとんど残していない。何より残念でならないのは、著作にあふれている映画の趣味の良さが、監督作品からはほとんど感じられないことである。
1950年代後半にハリウッド映画を讃えたフランスの映画批評家たちは、1960年代にヌーベルヴァーグの映画作家として大成した。このヌーベルヴァーグの人びとと、ピーター・ボグダノヴィッチとの懸隔の大きさに思いを馳せてしまう。それを才能の多寡というのはたやすいことだけど。(「昭和ブルース」by 天知茂)
投稿者 kmatsu : 2007年9月 1日 17:00
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