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2007年3月 4日

満鉄全史

「満鉄全史 『国策会社の全貌』」(加藤聖文 著、講談社選書メチエ)は、中国東北部に日本が設立した鉄道会社「満鉄」(南満州鉄道株式会社)の通史である。

本書の主張は一貫している。

「満州支配は何ら統一された意思も構想もないまま、さまざまな矛盾を抱えながら進められ、そして破綻していったのである」(p.13)という記述にあるように、「国策」で設置された満鉄が、時の政治勢力の駆け引きの中で一貫した方針がないまま「無策」で運営され続けた、というものである。

欧米列強に対して後発的に国民国家を形成した日本は、台湾・朝鮮・満州という植民地を抱えてからは後発的な帝国主義国として振る舞わなければならなかった。四十年にわたる満鉄の歴史に一貫性がないとしたら、それは日本が帝国主義国として成熟していなかった事実を示している。

日本にも「植民地学」という学問分野があった。小熊英二「<日本人>の境界」に述べられているこの学問分野は、現実の植民地経営にはまったく連動していなかったという。蓮實重彦・柄谷行人・浅田彰「近代日本の批評」では、「植民地学」が流行った大正時代は、現実と遊離した抽象的な言説が主流だったと述べられている。

満鉄経営・満州経営に一貫性がなかったという本書の主張は基本的に肯える。ただ、もし一貫性をもって経営されていたらどうなっていたのか、あるいは一貫性をもってどのように運営されるべきだったのかは、著者に問うてみたいところである。

欧米の植民地は満鉄が消滅してから短時間の間に独立した。後発的な帝国主義国は、植民地を失うことについては先駆的だったのである。

投稿者 kmatsu : 2007年3月 4日 22:13

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