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2006年10月10日
幻の東京赤煉瓦駅
「幻の東京赤煉瓦駅」(中西隆紀著、平凡社新書)という題名を見て、東京駅の来歴を語る書物だと勘違いした。おりしも、東京駅は、爆撃で破壊された応急処置の姿から、辰野金吾のオリジナル設計に復元する工事が進められている。
本書が扱う話題は東京駅にとどまらない。
いまはなき万世橋駅と有楽町駅。そして、芝の台地から駿河台(お茶の水)の台地をつなぐ高架線。東京駅を中心とした一連の赤煉瓦の大型構造物が取り上げられ、これらが帝都の偉容を体現するために計画的に建造されたことを伝える。
この地域は東京を周回する環状鉄道を完成するのに最後まで残された区間だった。西の長距離電車のターミナルは新橋、北の長距離電車のターミナルは上野。この間のミッシングリンクがつながらない限り、環状線はミッシングリン*グ*のままだったのである。田園地帯だった新宿や渋谷と違い、この地域が江戸時代以来の商業・住宅地域だったことが、鉄道の敷設を遅らせた理由である。
今は皇居と呼ばれている江戸城は、台地の外れの海岸に位置していた。中央区の大部分は、海岸を埋め立てて作られた平地である。鉄道による商業地域の分断を回避するために建造された赤煉瓦の高架は、芝と駿河台の台地を同じ高さでつなぐことによって、この地域が元は海だったことを控えめに示してもいる。
高架線と東京駅はいまも現役である。有楽町駅は赤煉瓦の駅舎の痕跡をまったく留めていないが、万世橋駅は、いまも神田駅とお茶の水駅の間の高架に遺構を認めることができる。
本書では、万世橋駅については、とりわけ多くの紙幅が割かれている。遺構は、人の記憶を留めもするのだ。
投稿者 kmatsu : 2006年10月10日 20:15
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