2006年5月 8日
世界共和国へ
「世界共和国へ −資本=ネーション=国家を超えて」(柄谷行人著、岩波新書)は、柄谷行人のさいきんの主張をいっぱん向けにまとめている。
著者のあとがきに曰く、「(「トランスクリティーク」などについて)ただ私の不満は、それが専門家にしか通じないような著作だという点にあった。このような仕事をするかたわら、いつも私は自分の考えの核心を、普通の読者が読んで理解できるようなものにしたいと望んでいた。というのも、私の考えていることは、アカデミックであるよりも、緊急かつ切実な問題にかかわっているからだ。」
資本(資本制生産・交換)、ネーション、国家のもつれ合いを、三位一体ならぬボロメオの環として原理的に把握する。このあたりの分析は例によって犀利、かつ、スリリングである。
著者の緊急かつ切実な問題とは、世界共和国の創出である。カントに即して曰く、「では、どのように国家に対抗すればよいのでしょうか。その内部から否定していくだけでは、国家を揚棄することはできない。国家は他の国家に対して存在するからです。われわれに可能なのは、各国で軍事的主権を徐々に国際連合に譲渡するように働きかけ、それによって国際連合を強化・再編成するということです。たとえば、日本の憲法第九条における戦争放棄とは、軍事的主権を国際連合に譲渡するものです。各国でこのように主権の放棄がなされる以外に、諸国家を揚棄する方法はありません。」
犀利な現実分析と、いささか空想的な処方箋とのギャップ。もちろん、統整的理念ならぬ、構成的理念を唱えるのは必要なことなのだろうけど。
投稿者 kmatsu : 2006年5月 8日 21:24
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