2005年12月17日
「カラシニコフ」の語り部
ルポルタージュ「カラシニコフ」の筆者である松本仁一氏の講演を聞いた。
お話の内容は書籍と同様だが、本人の肉声で語られると説得力がいや増す。
国家の基本的な役割は、人々が安全に暮らすことを保証する治安と、子供の将来を拓く教育である。だが、失敗国家では治安を司る軍隊と警察にも、教育を担う教員にも給料が支払われず、治安も教育もまったく機能していない。資源による外貨収入や海外からの援助は一部の人々だけを潤し、ほんとうに必要とする多数の人々には届かない。
今後も、事態は悪化する見通しである。
冷戦が終了し、米国とソ連の対立が解消したため、失敗国家への関心は低下し、かつて失敗国家を維持した莫大な援助は消滅している。豊かな国々にとって、資源のない失敗国家は興味関心の対象ではない。
だが、失敗国家の荒廃は、豊かな国々も無関係ではいられない。失敗国家の人々は仕事も希望もない自国を見捨てて豊かな国々に流入し、社会不安を増大させる。のみならず、荒廃国家には豊かな国々への怨嗟があふれ、そこに痛撃を与えようとするテロリストの温床となる。
サミュエル・ハンチントンは、キリスト教とイスラム教の二大文明の衝突の必然を語ったが、衝突するのは二大文明ではなく、富者と貧者である。
失敗国家の人々を援助するには、政府間援助ではなくNGOがよいという。NGOの適格性の審査は難しいが、政府を援助してもほんとうに必要とする人々には届かない。
こうした重いお話が中心だったが、松本氏ご本人は、著作にあふれる正義感だけでなくウィットを兼ね備えた立派な紳士だった。別の著作「アフリカを食べる」の内容を紹介するときの楽しそうなご様子が微笑ましかった。
投稿者 kmatsu : 2005年12月17日 22:48
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