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2005年1月 1日
間違ったさよなら
矢作俊彦の「THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ」を読んだ。
この作家は、世の事物が急速に安易に変わっていくことに対して、ずっと違和感を呈してきた。ハードボイルド小説でそれを声高に語ると、スノビッシュの謗りは免れない。だが、昨年の「ららら科學の子」は見事だった。1960年代末に中華人民共和国に渡って農村に下放されていた男が、二十一世紀を迎えてから日本に戻ってきたときに感じる違和感こそ、この作家が本領を発揮する場面である。
本作は、レイモンド・チャンドラーの「長い別れ」をベースにしているという。そんな本歌取りは別として、「間違ったさよなら」が様々な登場人物(ハードボイルド小説の通例に従って、ストーリーは錯綜としている)によって語られるのが味わい深い。幼少時に両親と死に別れた女性バイオリニストは、「誰かにちょっとさよならを言うだけで、もう二度と会えないような気がするの」と言う。現役を引退した元刑事は、「しかし、また今度でも何でもいい、別れも言わずにいなくなられるのは、いくつになってもたまらないさ」と語る。
ストーリー本体も「間違ったさよなら」を中心に展開する。矢作俊彦の熱心な読者以外には薦めにくいけど、面白く読み通すことができた。
なお、探偵(刑事)の主人公が、作中で何度も気を失うのも、この種の小説の通例である。
投稿者 kmatsu : 2005年1月 1日 13:45
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