2003年10月11日
吸血鬼
カール・ドライヤーの「吸血鬼」を観た。
いろいろな人が熱く語っているのでそれに付言することはあまりないけど、気づいたことをいくつか。
無声映画の語り口。セリフが少なく、物語は無声映画と同様にスポークンタイトルだけで提示されている。会話は物語の叙述にほとんど寄与していない。音楽や効果音と同レベルの音声として不気味な雰囲気を盛り上げることに専念している。
無声映画といえば、この作品はトーキー(音声付き映画)であるにもかかわらず、人間が動く場面の大半は無声映画のコマ数で撮影されているようだ。無声映画時代は毎秒18コマだったが、トーキーでは音質を改善するため毎秒24コマに引き上げられた。そのため、この映画の人間の動きはコマ落としのように加速されている。これがまた白日夢の効果を高めている。
長身で神経質そうな顔をした主人公は嶋田久作の線を細くした感じである。吸血鬼の手先の医者は常田富士男だな。
「裁かるるジャンヌ」では火刑に処せられたジャンヌ・ダルクの肉体が崩れるところまで描写していたが、本作でも医者が粉挽き小屋で粉に埋もれて絶命するところまで描いている。このあたりは趣味が悪くて共感できる。
本作は独・仏・英の三カ国版が製作された。セリフのあるシーンは各言語で三回撮影したそうだ。これは当時の欧州映画では一般的だったとか。今回の上映プリントはドイツ語版で、最後に検閲で修正された2つのシーンのオリジナルがフランス語版から収録されている。ちなみに、修正されたのは吸血鬼に杭を打ち込むシーンと、医者が粉に埋もれるところである。
20年前に観たプリントはフランス語版だったが、最後の場面で画面と音が15秒くらいずれて、しかも音声が英語になるという、へんてこな代物だった。画質もひどかった。今回の上映プリントは、製作直後の状態には及ばないだろうが、ずっとましだった。
投稿者 kmatsu : 2003年10月11日 22:31
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