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2003年7月 5日

蛇を踏む

川上弘美の「蛇を踏む」(新潮文庫)を読んだ。内田百ケン(門がまえ+月)の「冥土」といった怪異小説の伝統に属する。また、短いエピソードを連ねた「惜夜記(あたらよき)」を読んでいたら、稲垣足穂の「一千一秒物語」を思い出した。ただし、稲垣足穂はイデア界の住人だが、川上弘美は妖怪界に帰属する。乱暴な言い方をすれば、それぞれ、男性的(マッチョではなくイデアを指向するという点で)、女性的と言えるだろう。

でも、川上弘美の小説は怪異ものより性愛ものを好む。

「溺レル」は性愛ものの極致である。中年という年齢域に属する男女の性愛の機微を描いて哀切きわまりない。いや、自分が中年に属しているから心が動かされるのかも知れないけど。

「センセイの鞄」は性愛と怪異趣味が好バランス。バランスがいいなんてのは不思議な言い方だけど。そういえば、「センセイの鞄」は、今はなき平凡社の雑誌「太陽」に連載されていた。一緒に旅行するエピソードが掲載された号をたまたま読んだときは、けったいなお話だと思ったものだ。

「太陽」といえば、これこそオヤジ雑誌の王道である。「サライ」だの「ペン」だの「オブラ」だのといったオヤジ雑誌が逆立ちしても追いつけない風格を備えていた。「太陽」の廃刊は、日本のオヤジ界の貧相さを現している。

投稿者 kmatsu : 2003年7月 5日 21:04

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